最高裁の定義
法律上、「不貞行為」という用語は、民法770条1項1号に出てきます。最高裁の判例では、不貞行為とは「配偶者のある者が、自由な意思にもとづいて、配偶者以外の者と性的関係を結ぶことをいう」とし、自由意思に基づく「姦通」に限定しています(最判昭48・11・15民集27巻10号1323頁)。つまり、既婚者と「交際」しているだけでは「不貞行為」ではないということになりますし、キスやハグだけで、「姦通」=性交渉がなければ、「不貞行為」ではないということになります。
ただ、気をつけなければならないのは、成人の男女が交際したり、キスやハグをしていれば、性交渉もあるだろうと推認されてしまう可能性が高いので、キスやハグの証拠しかないから大丈夫というわけではありません。
不倫と不貞の違い
法律に「不倫」という用語は出てきません。したがって、「不倫」は法律上の用語ではないのですが、裁判例には『「不倫関係」とは男女関係が人の道に外れている関係,「不貞」とは貞操を守らないこと(配偶者のある者が配偶者以外の者と肉体関係を結ぶこと)という意味で用いる』としたものがあります(東京地裁平28・11・30)。この定義によれば、肉体関係がなくても、人の道に外れた関係を持てば、「不倫」に該当することになります。
肉体関係がなければ慰謝料は払わなくて良いのか
不貞行為で慰謝料が認められるのは、「婚姻共同生活の平和の維持という権利又は法的保護に値する利益」を侵害するからです。したがって、不貞行為=肉体関係がなくても、婚姻共同生活の平和に亀裂を入れるような行為をすると、慰謝料が認めらます。
たとえば、キスやハグなどは、婚姻共同生活の平和に亀裂を入れることになるでしょう。
また、交際しているというだけでも、婚姻共同生活の平和に亀裂を入れると考えるべきでしょう。
さらに、交際していなくても、異性と親密なやり取りをしているだけで、婚姻共同生活の平和に亀裂を入れる場合があるでしょう。
裁判例には、『週に2、3回の頻度で会っており、Aと日光といういわゆる観光地に行き、腕を組むなど親密な行為をし、別れ際には抱き合うなどしている』という事実について、『婚姻共同生活の平和の維持という権利又は法的保護に値する利益を侵害するものであり、不法行為に当たるということができる。』と判断したものがあります(東京地裁平31・2・26)。
したがって、肉体関係がなければ慰謝料を支払わなくて良いというわけではありません。