とりあえず内容証明を送れば良いの?

目次

郵便局が「内容を証明してくれる」手紙のこと

内容証明は、どのような手紙を出したか(内容証明)、いつ誰が受け取ったか(配達証明)を郵便局が証明してくれる手紙です。法的に特別な効果はありません

「そんな手紙は受け取ってない」と白を切られるのを防止したり、正式な文書であることを印象付けたりする効果はありますが、不貞を証明したりすることはできません。

弁護士からの内容証明を受け取った人は、ビックリして、すぐに対処しなければならないと考えることが多いので、相手本気を伝えるのには効果があります。

内容証明に記載する請求額

実務上、不貞慰謝料の請求額は100万円~500万円まで幅があります。

裁判例では、100万円~200万円前後の判決が多いので、200万円を超える場合は、相場からすれば、高すぎる場合があります(ただし、300万円以上が認められた裁判例も結構あります)。

高すぎる請求をすると、受け取った方はびっくりして、弁護士に相談する確率が高くなります。弁護士はプロなので、交渉相手としては手ごわいと考える必要があります。

相手が弁護士に相談するのを避けるには、内容証明よりも、普通郵便や電話で連絡した方が良い場合もあります。

他方、交渉は、高額な賠償金を獲得するチャンスでもあります。裁判では認められないような金額でも、示談すれば有効(高額すぎて公序良俗違反になる場合を除く)だからです。

弁護士以外が送付する内容証明

弁護士名の内容証明は、訴訟の予告に等しい効果があります。

これに対して、本人名義や行政書士名義の内容証明では、「交渉が決裂しても、直ちに訴訟になる可能性は低い」と思われる可能性があります。また、弁護士に依頼する費用がない訴訟沙汰にしたくない証拠に自信がないなどと思われてしまうケースもあります。

自分で内容証明を送ったけど無視された、交渉がなかなか進展しない、という相談がよくありますが、受け取った方にどのような印象を与えるかを、よく知っておく必要があります。

回答期限はいつまでにするか

回答期限は請求側が勝手に設定するものですので、これを過ぎたからといって、法的な効果はありません。

中には、回答期限を極端に短くすることによって、焦って電話を掛けるように仕向け、自白を取ろうとしたり、高額な慰謝料に同意させようとするケースもあります。

しかし、あまり短い回答期限を設定すると、受け取った方は、自分で対処できないと即断してしまい、弁護士に相談する確率が上がるかもしれません。

基本的には、相手がきちんと検討して回答を準備する程度の期限は設けた方が良いでしょう。常識的には1週間~2週間といったところでしょうか。

内容証明だけで解決する割合

「まず自分で内容証明を送ろうと思っている。」という人は珍しくありません。

しかし、弁護士としての経験上、内容証明を送るだけで解決した例はほとんどありません。内容証明は交渉のスタートに過ぎないと考えておきましょう。

少なくとも、以下のような態度を取られた場合、どのように対応するべきかを予め決めておくべきです。

  1. 不貞自体を否定される→「こっちには証拠があるのだから、不貞を否定されても大丈夫。」と思っているかもしれませんが、実際に直面すると、対応を迷うことが多いと思います。果たして証拠を全部開示しても良いのか、それによって不利になることはないかなど、色々なことを考えなければなりません。
  2. 婚姻関係が破綻していたから支払義務がないと言われる→「婚姻関係が破綻していたから慰謝料を支払う義務がない」という反論は、裁判所はそう簡単に認めませんが、それはあくまで裁判所の傾向です。双方で話合いをする段階では、裁判所が判断してくれるわけではないので、相手が婚姻破綻の反論に固執することは珍しくありません。
  3. 既婚者だと知らなかったから支払義務がないと言われる→既婚者だと知らなかったというのが嘘であるか、もしくは、真実だとしても、過失があったことを証明しなければ、慰謝料は認められません。こちらも、交渉段階では、裁判所が判断してくれるわけではないので、このような反論が来たら、弁護士抜きで交渉を進めるのは難しいと言えます。

内容証明はファーストコンタクト。その内容によって、受け取った方の行動が大きく変わることもあります。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次