証拠が無いなら支払いを拒否したい

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「証拠が無い」は本当か??

証拠が無いなら、支払いを拒否したい。白を切っていれば諦めるかも…。

まあ、そう考えるのは人情だと思います。
しかし、「証拠が無い」とはどういう状態かをちょっと考えてみましょう。

慰謝料請求が来たということは、少なくとも、あなたにたどり着くだけの「何か」は握られているはずなんです。それが、不貞を証明するのに十分でなかったとしても、疑われても仕方のないような「何か」が出てきたとき、嘘の弁解を貫き通すのは容易ではありません。

それに、低い金額で和解を目指したいとか、早く終わらせて解放されたいといった理由で、不貞相手の方が裏切って自白に転換してしまうリスクも考えなければなりません。2人で最後まで足並みを揃えて嘘をつき続けられる保証はないのです。

本来、肉体関係を直接立証することは容易ではありません。性交渉は密室で行われるからです。そこで、裁判所は、ラブホテルに一緒に入る、深夜に自宅に招く、LINEの親密なやり取り、親密な会話、手をつなぐ、ハグをするといった様々な「間接事実」のほか、「弁解が不自然」といった被告側の態度をも加味して、不貞行為を認定しています。つまり、あなたの弁解が不自然だと、不貞が認められてしまうかもしれないのです。

でも立証責任は請求側にあるのでは?

立証責任が請求側にあるというのは、真偽不明の場合(不貞があったか無かったか分からない場合)に原告の請求が認められないという意味でしかありません。反論が不要ということではないのです。

もし、原告の証拠が不十分であっても、具体的な反論をしなければどうなるでしょうか。

考えてみてほしいのですが、本当に不貞が存在しなかった場合、訴訟を起こされた側としては、普通、「証拠がないだろ」という態度を取るでしょうか?必死に反論し、不貞が存在しないことを証明しようとするのではないでしょうか。「不貞がないことを頑張って証明しようとしない」という態度は、それ自体が不自然なのです。このような態度は、裁判所の心証に悪影響を与えざるを得ません。

弁護士は嘘の弁解ができない

弁護士は、基本的に、嘘をついて弁護することができません。不貞の事実があるのに、「不貞はない」と反論することはできないのです。そのため、訴訟を起こされたとき、弁護士に依頼したい人は、請求側に一切証拠が無くても、嘘の弁解をすることができなくなります。

当然、最初から弁護士に嘘を付いておけば、嘘を前提に弁護してもらうことも可能です。
しかし、もし、決定的な証拠が出てきて嘘が露呈すれば、弁護士から辞任されてしまう可能性もあります。その場合、弁護士には落ち度がないということで、支払った着手金が一切返金されないという事態も考えられます。それに、請求側と裁判所だけではなく、自分が依頼した弁護士にまで嘘を突き通す精神力がある人は、なかなか少ないのではないでしょうか。
結局、訴訟を起こされると、証拠が無くても、自白せざるを得ない状況に追い込まれるということがあり得るのです。

否認すると支払額が増額するリスクがある

当然ですが、否認するということは、不貞はなかったという前提で反論していくことになります。

不貞がないのに、慰謝料を減額する主張をするのは変ですよね?

つまり、否認すると、慰謝料減額要素を十分主張立証できなくなるリスクがあるのです。また、逆に、反省していないということが、慰謝料増額要素になってしまう可能性もあります。

また、探偵の調査費用などは、賠償が認められ難い傾向にありますが、認める裁判例もいくつかあります。調査費用の賠償を認める裁判例では、その理由として、「被告が否認していること」を指摘している例が多いので、否認すると調査費用の賠償も認められやすくなると言えるでしょう。

不貞があったのに嘘の否認をするというのは、慰謝料が高額になるリスクがあると言えるでしょう。

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