慰謝料請求された人へ

慰謝料請求されたら、弁護士を付けることをオススメします。

弁護士から請求が来た場合は、弁護士を付けずに応戦すると、不利な示談を強いられる可能性があります。また、不用意な発言によって、窮地に追い込まれることもあります。

相手が弁護士を付けていない場合には、家族・会社への暴露が行われたり、強迫を受けることがあります。また、せっかく示談しても、素人が作った示談書は、法的に整理されていないために、再請求を受けたり、思わぬトラブルが発生することもあります。

当事務所では、不貞慰謝料に精通した弁護士が、適正妥当な額で減額交渉し、可能な限り訴訟を避ける形で、示談交渉を行います。ご依頼後は、相手方と直接会話することは一切ありません。全て弁護士にお任せください。

目次

不貞とは(不倫との違い)

不貞は、配偶者以外の者と性的関係(肉体関係)を持つことで、法律用語(民法770条1項1号)です。

これに対して、不倫は法律用語ではありませんので、明確な定義があるわけではありませんが、人倫に反する行為という意味で、要するに、結婚している人と交際することと考えればよいでしょう。

肉体関係はなくても、婚姻共同生活の平和を害するような行為(キス・不適切なLINEのやり取りなど)があれば、不法行為(民法709条)が成立するので、慰謝料を支払わなければならない可能性があります。ただし、肉体関係がなければ、金額は低くなることが多いでしょう。

支払わなくて良いもの

探偵(興信所)の調査費用

裁判例では、探偵(興信所)の調査費用は認められない傾向にあります。

一部認めた裁判例もありますが、少なくとも、交渉段階では支払いに応じる必要はないと思われます。

慰謝料の1割を超える弁護士費用

訴訟で判決が出ると、慰謝料の1割程度が弁護士費用として認められます。

しかし、1割を超える弁護士費用は認められない傾向にあるので、支払いに応じる必要はありません。

治療費や休業損害

精神的ショックを受けて心療内科で治療を受けたり、仕事を休んで収入が減少したと主張してくることがあります。

しかし、法律上、不貞行為との間に相当因果関係が認められる可能性は低く、原則として、これらを賠償する必要はありません。

その他(慰謝料以外のあらゆる請求)

不貞行為に対して認められる賠償金は、ほとんど慰謝料+弁護士費用(慰謝料の1割)に尽きます。

それ以外の請求を受けた場合には、いったん弁護士に相談するなどして、支払義務があるかを慎重に判断しましょう。

ただし、法律上は支払義務のないものでも、金額によっては、示談を成立させるために支払いに応じるという戦術もあり得ます。

反論すべきこと

故意・過失がない場合

既婚者だと知らず、知らなかったことに過失がない場合、慰謝料を支払う必要はありません。

「知らなかったとはいえ既婚者と関係を持ってしまったからには慰謝料を支払わなければならない」というのは誤解なので、注意してください。

どういう場合に過失が認められるかははケースバイケースですが、少なくとも、既婚者ではないかと疑えるような事情があったことが必要です。

減額交渉

不貞慰謝料として最初に請求される金額は高すぎることが多いので、まずは減額交渉をするべきです。

慰謝料の相場は150万円~300万円程度と言われていますが、300万円が認められるのは非常に悪質な場合に限られ、ほとんどの事案では、MAX200万円程度です。

相手が主導的立場だったことや、もともと夫婦仲が悪かったことなどは、減額要素として主張することができます。

求償権の放棄

不貞は共同不法行為といって、配偶者と不貞相手が連帯して責任を負います。

連帯責任とは、例えば、慰謝料が200万円だとすると、配偶者と不貞相手のどちらに200万円を請求しても良いが、一方から200万円を受け取ると、他方には請求できなくなるというものです。

その結果、一人で200万円を支払った方は、他方に対して求償(負担を求めること)ができるのです。

相手夫婦が離婚しない場合、求償権を放棄する代わりに半額にすることを提案するべきです。

いったん全額を支払った上で、求償権を行使しようとしても、相手が任意に支払ってくれる保証はなく、弁護士を付けて訴訟を起こさなければならない場合もあり、簡単ではありません。

婚姻関係の破綻

既に婚姻関係が破綻している場合、不貞があっても、慰謝料を支払わなくて良いというのが最高裁判例です。

「配偶者と仲が悪い」「既に破綻している」と言われて交際を開始した人も多いと思います。

しかし、婚姻関係が破綻しているというためには、原則として、別居が必要で、家庭内別居では足りません。したがって、この反論が認められるケースは少ないと言えます。

ただし、夫婦仲が悪ければ、それだけ不貞が婚姻生活の平和に与えた影響も小さいということになるので、慰謝料の減額理由になりますので、積極的に主張していくべきです。

消滅時効

不貞慰謝料の消滅時効は、不貞の事実および不貞相手を知ったときから3年です。

時効を主張するためには、相手が3年以上前に不貞の事実を知り、自分の存在も知っていたことを立証する必要があります。

立証責任は時効を援用する側にあるので、証明できなければ、時効は認められません。

交渉の注意点

録音されている可能性

電話や面会など、口頭で交渉する場合、録音されている可能性に注意が必要です。

口頭であっても約束は成立するので、うっかり慰謝料を支払うと言ってしまうと、後から争えなくなる場合があります。

相手が一人で来るとは限らない

レストランや喫茶店に呼び出された場合、相手が一人で来るとは限りません。

家族や同僚など、仲間を連れてくる可能性がありますし、探偵や弁護士などを予告なく同席させる可能性もあります。

あまり事例としては多くありませんが、反社会的な人物を同席させる可能性もゼロではないため、面会に応じる場合には、十分注意が必要です。

その場で署名・押印しないこと

相手の呼出しに応じ、署名・押印しないと帰してくれない雰囲気になって、署名・押印してしまう人が後を絶ちません。

その場では絶対に署名・押印せず、必ず持ち帰って検討しましょう。

どうしても帰してくれない場合、いきなり席を立って走って逃げてしまっても構いません。

相手は怒るかもしれませんが、示談という重要な意思決定について、持ち帰って検討することを許さないような相手と交渉を続けるのは避けた方が無難です。

示談の注意点

示談書と公正証書の違い

当事者間で示談書を作成して署名押印をしても、一方が約束を守らなかった場合、結局裁判が必要になります。示談書は、そのような約束をしたという証拠にはなりますが、それだけで財産を差し押さえたりすることはできません。

示談書を作成するときは、必ず、同じものを2部作成して1部を貰うか、コピーを撮って手元に残しておきましょう。

公正証書は、一方が約束を守らなかった場合、裁判をせずに財産を差し押さえることができます。

公正証書は、約束を破ると強制執行を受ける可能性がある上、後から強迫されたなどの理由で取消しを主張することがほとんどできなくなるので、慎重に判断する必要があります。

違約金条項

不貞関係を終わらせるために、接触禁止条項や違約金条項を求められることがあります。

1回連絡を取ったら10万円などの違約金条項が入っていると、不貞の証拠がなくても、連絡を取ったという事実だけで、10万円を請求されてしまうので、注意が必要です。

また、再度不貞したら300万円という条項が入っていると、再度、不貞を繰り返した場合、金額を争うことができなくなってしまいます。

よくあるのが、「もう離婚した」と嘘をつかれて不貞を再開してしまうケースです。一度示談した以上、再度不貞に及ばないように注意すべき立場にあるわけですから、このような嘘に騙された場合、過失が認められる可能性が高いと言えます。

口外禁止条項

第三者に口外されると社会的立場が危うくなるような場合、これを入れておくと効果的です。

また、口外禁止条項違反に違約金を定めてもかまいません。

ただし、第三者に口外したのが相手方であるという証明は難しいことも多いので、心理的な抑止効果を期待するしかない場合もあります。

求償権放棄条項

求償権放棄条項を入れてしまうと、不貞相手に求償することができなくなります。

放棄する代わりに慰謝料を半額にするというのであれば構いませんが、そうでなければ、一人で全額を負担することになってしまうので、注意する必要があります。

清算条項

清算条項とは、「本示談書に定めるもののほか、何らの債権債務もないことを相互に確認する。」という条項です。

これを付けてると、その示談書に書かれた内容以外、もはや一切請求を受けることがなくなります(ただし、示談後に再度不貞に及んだ場合は請求されます。)。

清算条項は、紛争の蒸し返しを防止するために必須なので、示談するときは必ず付けるようにしてください。

訴訟手続の注意点

出廷するのは弁護士だけ

できるだけ訴訟を避けたいという人は珍しくありません。

もちろん、解決までに時間がかかるなど、訴訟にはデメリットもありますが、ほとんどの期日は弁護士だけが出廷します。

尋問まで進めば、本人が裁判所に出廷しなければならないこともありますが、不貞慰謝料事件は、比較的、途中で和解することが多い事件類型です。そのため、一度も裁判所に行かずに訴訟を終えられる方も多数おられます。

判決になったら一括払い

判決になったら一括払いを命じられるので、支払えなければ、直ちに強制執行を受ける可能性があります。

経済的理由から分割払いにしたい場合には、途中で和解するしかありません。

裁判の公開?

口頭弁論期日(尋問期日)以外の弁論準備手続、書面による準備手続は原則非公開です(口頭弁論や尋問期日は公開です)。

また、民事訴訟の記録は、一般の方でも閲覧できますが、事件番号で特定して閲覧申請しなければなりません。

裁判所に行けば、開廷される事件の一覧表(事件番号や原告・被告の氏名)を見ることができますが、インターネットで検索することはできません。

傍聴や記録の閲覧によって友人・知人に不貞の事実を知られる可能性は、一般的には低いと言えます。

迷惑行為への対応

家族・勤務先への暴露

結婚は家族同士の問題という価値観を持ち、不貞相手の親に言うという行動に出る人は、実は相当数存在します。しかし、法律的には、家族は一切関係なく、家族への暴露行為に正当性はありません。

また、社会的制裁を受けてほしいということで、勤務先に通報する人も、珍しくありません。特に、社内不倫の場合、不倫を止めさせるためという名目で、会社に通報するケースは多いので、警戒する必要があります。

名誉毀損やプライバシー侵害といっても、後から損害賠償請求ができるにとどまり、事前に抑止する確実な方法はありません。しかし、弁護士を付けて警告する書面を出しておけば、心理的な抑止効果が期待できます。

突然自宅や勤務先に来る

突然自宅や勤務先に来た場合、応対する義務はありませんので、毅然と拒否するのが効果的です。

近所の目や会社での立場を考えて応対してしまうケースがありますが、止めた方が無難です。

自宅に来た場合には、警察を呼んでしまいましょう。民事不介入なので、警察は何もしてくれない可能性が高いですが、相手も警察を呼ばれるとは思っていないことが多いので、将来の迷惑行為を抑止する効果があります。

勤務先に来た場合には、勤務中だからという理由で断って大丈夫です。

弁護士に依頼するメリット

交渉が進みやすい

当事者同士で交渉しても、なかなか話が前に進まないというケースが良くあります。

しかし、弁護士の言うことであれば聞き入れるという人も多く、交渉が進展することは珍しくありません。

蒸し返しを防止できる

いったん示談した後に再び慰謝料請求を受けるケースがあります。

たとえば、「離婚したから追加で払ってほしい」とか、「知らなかった事実が出てきたから金額に納得できない」という場合です。

弁護士であれば、このような事態を防止するために、不備のない示談書を作成することができます。

的確に反論できる

既婚者だと知らなかったことについて過失があるかどうかや、もともと夫婦仲が悪かったので慰謝料は減額されるべきといった反論をする場合、弁護士でなければ的確な反論が難しいことが多いと思います。

精神的な負担から解放される

弁護士が間に入って交渉するので、相手と直接やり取りする精神的な負担から解放されます。

迷惑行為を抑止できる

弁護士から警告書を出すことで、家族や勤務先への暴露などの迷惑行為を抑止することが可能です。

先に弁護士を付けるという戦略

相手が弁護士を付けていない場合、こちらが先に弁護士を付けてしまえば、出鼻を挫くことができます。

相手は一度も本人と話したことがない状態でプロと交渉しなければならない状態に陥るので、心理的に有利な立場で交渉を進めることができます。

もちろん、こちらが弁護士を付けたことによって、相手が弁護士に依頼することを促してしまうという側面もあります。

しかし、弁護士を付けずに慰謝料請求をする人は、弁護士費用を惜しんでいる場合が多く、そのまま自分で交渉を続けようとすることも十分あり得ますので、素人対プロの交渉に持ち込み、有利な解決が実現できる可能性が高くなります。

弁護士から請求が来た場合

相手が弁護士を付けて請求してきた場合、弁護士の目標は相場以上の慰謝料を取ることだと考えるべきです。

弁護士は、素人相手に簡単に譲歩しないので、いくら慰謝料相場や減額事由を主張しても減額に応じてくれないことを覚悟してください。

弁護士に相談する前に高額な慰謝料に合意させてしまおうと考えている弁護士は珍しくありません。

他方、こちらも弁護士を付けて減額交渉をすれば、法律家同士の話に持ち込むことができ、慰謝料相場や減額事由といった主張も意味を持ってきます。

ご依頼前提ではない相談もOK

当事務所では、ご依頼を前提としない法律相談にも対応しております。

弁護士から請求が来ている場合には、事務所名や内容証明の文面によって、相手の弁護士の傾向(訴訟をしやすいかどうかなど)を予測することができる場合もありますので、お気軽にご相談ください。

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