勝手に減額して支払う作戦について

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勝手に減額して支払う作戦

不貞慰謝料300万円を請求され、訴訟を起こされると150万円~200万円になることが予想されるとします。しかし、あなたは、負担の総額を130万円に抑えたいと考えています。

このとき、弁護士に依頼して減額交渉すると、①交渉→②合意→③支払いという順番になります。交渉で100万円に減額できとしても、当事務所の料金体系では、着手金23万1000円+減額報酬金29万9200円(170万円×17.6%)がかかるので、負担の総額は183万200円になってしまいます。

そこで、弁護士を付けず、自分で交渉して130万円にできれば良いのですが、あなたにはその自信がないとします。

では、相手が送ってきた内容証明に記載されている口座に勝手に130万円を振り込み、「130万円が妥当だから130万円しか支払わない」と一方的に通告する作戦(合意なき一部弁済作戦)はどうでしょうか?

メリット

この作戦は、相手が訴訟を起こすメリットを削減し、リスク・コストを増加させることが目的です。

つまり、訴訟の結果予想は150万円~200万円なので、既に130万円を受け取っていると、訴訟を起こしても、相手は、あと20万円~70万円しか得られない可能性があります。訴訟を起こすために弁護士に依頼すると、最初に着手金を取られ、更に成功報酬を取られるので、あと70万円の賠償が認められても、ほとんど手取りがなくなります(判決で、あと70万円の慰謝料が認められても、弁護士費用の賠償は1割の7万円に過ぎません。)。もし、あと20万円しか認められなければ、赤字になってしまいます。

また、そもそも、経済的利益の小さい事件は、依頼を受けてくれる弁護士が見つかりにくいという問題もあります。

そのため、コストと時間を費やして訴訟を起こすということが難しくなるわけです。

この作戦のメリットは、相手と交渉する必要がなく、一方的に減額して支払うだけなので、素人でも簡単にできるという点にあります。交渉の精神的負担もなく、弁護士に依頼する必要もありません。

デメリット

訴訟を諦めるのは希望的観測に過ぎない

あと20万円~70万円のために訴訟を起こさないだろうというのは希望的観測に過ぎません。特に、既に弁護士を付けて請求してきている場合には、訴訟を起こす場合でも、追加着手金が不要な法律事務所も存在しますので、訴訟提起の負担は小さいと言えます(印紙代と切手代くらい)。

和解書を取り交わせない

この作戦は、合意を成立させずに、一方的に一部だけ弁済してしまうというものなので、和解書を取り交わすことができません。そのため、第三者への口外禁止条項や接触禁止条項など、あなたが安心できる合意も取り交わすことが不可能になってしまいます。せっかくお金を払ったのに、「もう終わった」という安心を得ることができないのです。

いつまでも督促が来る可能性がある

相手としては、少額のために訴訟を起こすのは躊躇するので、差額を支払うように、いつまでも督促が繰り返される可能性があります。あなたとしては、「もう連絡するな。訴訟を起こしてくれ。」と突っぱねることはできますが、相手がそれに従うとは限りません。

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