実際の事例で見る弁護士を付けた方が良い理由

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【ケース1】支払った後の追加請求

不貞相手の夫から慰謝料請求された男性が、早く終わらせようと思って、相手の言い値である300万円を支払い、きちんと示談書も作成しました。終わったと思っていたら、後日、追加で100万円の請求が来てしまいました。相手方が言うには、「不貞期間はもっと短いと思っていたが、思っていたより長かった。離婚するつもりはなかったが、離婚することにしたので、300万円では納得できない。」ということでした。

この事件のポイントは、示談書を取り交わしたとしても、相手が紛争を蒸し返すことはあり得るということです。もちろん、300万円というのは、ほとんどの不貞慰謝料事件では、満額以上の金額ですので、結論としては、追加請求が認められない可能性が高いといえます。しかし、この男性の場合、早く終わらせたくて相手の言い値を支払ったのです。追加請求を受けて、再度対応を迫られるのであれば、最初から、弁護士に依頼して、解決をしておいた方が、支払う額も300万円未満になり、二度と蒸し返されないような解決が得られた可能性が高いでしょう。
もし、弁護士を通じて示談書を取り交わしていれば、果たして、このような追加請求をしてきたでしょうか。弁護士を通じて解決すれば、請求側としても、「これで終わり」という意識を持ちやすくなりますので、紛争の蒸し返しを防止する効果があるのです。

【ケース2】話合いだけだと思ったら

ある男性が、不貞相手の夫から呼び出され、レストランで話合いをすることになりました。ところが、レストランに行ってみると、相手方の知人を名乗る強面の人物が同席し、2対1の話合いになってしまいました。話し合いだけのつもりでしたが、相手は自作の示談書を持参しており、男性の印鑑まで準備して、その場で500万円を支払う示談書に署名押印するように強く求められました。男性は、その場の雰囲気にのまれ、合意しなければ帰してもらえないと思って、署名押印してしまいました。

示談書に署名押印してしまってから、「やっぱり減額できないか」と相談に来る人は後を絶ちません。実は、不貞慰謝料請求事件では、当事者同士で示談書に署名押印してしまっても、弁護士が介入して減額交渉すれば、減額できることもあるのですが、示談書自体は有効と言わざるを得ないケースが多いので、やはり相当不利になると考えた方が良いでしょう。普段、交渉慣れしていない人は、相手の不意打ち的な行為に飲まれてしまいがちです。弁護士に依頼すれば、直接交渉する必要はありませんから、冷静に、落ち着いて、決断することが可能になりますし、相手の罠にかかることもなくなります。

【ケース3】終わらない道徳的な要求

不貞相手の夫から300万円を請求された男性の例です。男性は高収入だったので、300万円なら支払っても良いと思い、支払いました。ところが、その後、相手方は、離婚することになったので、「自分の親族に謝罪して欲しい」とか、「子供たちに謝罪して欲しい」などと言い出し、収拾がつかなくなりました。

結婚というものをどのように考えているかは、人によって随分異なります。法律の世界では、あくまで夫婦2人の問題です。しかし、世の中には、お互いの家同士の問題という価値観を持っている人もいますし、世間体を気にして結婚式に呼んだ親族に申し訳ないと思う人もいます。離婚の一番の被害者は子供だから、子供に謝罪すべきだという考えの人もいるのです。たしかに、親族や子供にまで謝罪しろと言い出す人は、数としては少数派ではあるのですが、相手がどのような価値観を持っているか不明の状態で、お金さえ払えば終わらせることができるだろうと考えたのは、軽率だったと言えるでしょう。弁護士に依頼するメリットは、慰謝料を減額するだけではありません。相手に法律外の要求までは認められないことを自覚させ、法律に則った解決を了解させるためにも、弁護士を付けることには大きな効果があります。

【ケース4】低すぎる提案の代償

不貞相手の夫から120万円を請求された男性。自分で相手と交渉し、20万円しか払えないと突っぱねました。その結果、相手が弁護士に依頼し、今度は200万円の請求が来てしまいました。

もし、20万円で済んでいれば、確かに丸儲けだったと思います。しかし、低すぎる提案をされた相手はショックを受け、「この交渉は自分の手に負えない」と確信したことでしょう。それが、結果的に、弁護士へ依頼する決断につながったのです。相手に弁護士がついた以上、絶対に20万円では済みません。訴訟を起こされれば200万円を支払えという判決が出る可能性は、十分あり得ます。
しかし、最初から、弁護士に依頼していればどうだったでしょうか。同じ20万円でも、弁護士から提案されれば、相手も納得した可能性があります。納得しなかったとしても、最初の請求が120万円だったのですから、70万円や80万円で示談できた可能性もあったのです。
相手に弁護士が付いていない段階こそ、先に弁護士に依頼することで、交渉を有利に進めることができますし、相手に先に弁護士が付くという事態を防ぐこともできるのです。

【ケース5】恫喝的な弁護士

ある日、不貞相手の夫の弁護士から突然電話がかかってきました。弁護士は恫喝的な口調で「勤務先にばれたら困るのではないか」などと言って300万円を請求してきました。

素人相手に恫喝的なことを言う弁護士は、残念ながら存在します。数が多いとは言えませんが、珍しいというほどでもありません。不貞慰謝料請求事件で、弁護士が恫喝的なことを言って、懲戒される例などもあります。しかし、恫喝的なことを言う弁護士も、腐っても弁護士なので、脅迫とまでは言えないような、微妙な交渉の仕方をしてくることが多いのです。相手が、そのような弁護士の場合、こちらも弁護士を付けるのが効果的です。素人相手だから、足元を見て交渉してくるのであって、弁護士同士であれば、そのような事態にはなりません。相手の弁護士と直接話すストレスからも解放されるでしょう。

【ケース6】訴訟を起こす気がない弁護士

ある日、仲の良い同僚女性の夫が依頼した弁護士から不貞行為を理由に300万円を請求されました。しかし、男性は不貞などしておらず、単に、同僚女性の相談に乗っていただけでした。どうやら、2人きりで居酒屋で飲んでいたところを目撃されたようです。それを相手の弁護士に伝えたのですが、相手の弁護士は、「示談しないなら訴訟する。せめて50万円だけでも支払ってはどうか。」などと言ってきました。

近年、完全成功報酬制で不貞慰謝料請求事件を受任する法律事務所が増えています。ただし、完全成功報酬制といっても、訴訟まで無料で起こすことはありません。あくまで、交渉だけやってみて、上手くいったら儲かるというビジネスモデルなのです。このような事務所の特徴は、十分な証拠がなくても、慰謝料請求してくる可能性があるということです。既婚者が居酒屋で男女2人きりで飲んでいたからといって、別に不貞とは限りませんが、不貞関係がある場合もあります。証拠がなくても、可能性のある人へ慰謝料請求し、上手く電話で自白を得られれば、それを証拠にお金を取ることができます。依頼者からしても、証拠が乏しい状況では、弁護士に着手金を支払っても、費用倒れになる可能性があるので、完全成功報酬制で、とりあえず請求してくれる事務所があれば、依頼するというわけです。
このような事務所から請求を受けた場合、こちらも弁護士を付けて交渉することが極めて効果的です。というのは、相手弁護士が訴訟に消極的な場合、こちらが弁護士を付けてしまえば、こちらだけが「別に訴訟で良いですよ」というカードを持つことができ、交渉をも有利に進めることができるからです。ただ、相手が訴訟に積極的か消極的かというのは、なかなか素人には見抜くことが難しく、弁護士同士でなければ分からないものがあります。相手の弁護士の弱点を見抜くことができるのも、弁護士に依頼するメリットと言えるでしょう。

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