職場不倫と会社の対応

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職場不倫の場合、会社に使用者責任を問うことができるか?

実際、これが争われた裁判例もあるようですが、原則として否定されます。

使用者責任は、従業員が事業の執行について他人に損害を加えたとき、会社も責任を賠償負うというものです(民法715条1項)。

しかし、いくら職場不倫であったとしても、通常、事業の執行についての要件を充すことはないでしょう。男女交際は、あくまで当事者同士の私的な行いで、単に出会いが職場であっても、仕事に関連するとは言えないからです。たとえば、業務時間中に不貞に関するやり取りをしていたとしても、その程度では、不貞に業務関連性があると言えないでしょう。

会社は不貞をした従業員を懲戒することができるか?

不貞行為は、犯罪でこそありませんが、民法上の不法行為を構成し、他人に違法に損害を与える行為とされています。不倫という用語からも分かるように、道徳的・社会的に人倫に反する行為と評価されており、社会的批難を受ける行為です。

そのような行為を職場で同僚と行った場合、やはり企業秩序を乱すと評価せざるを得ず、懲戒処分の対象になると言えます。ただし、私的な男女関係という側面もあるため、業務に支障が生じていない限り、あまり重い処分を科すことは難しいと思われます。

また、会社は、懲戒とは別に、配置転換などを行い、不貞した者同士が接触しないようにすることも、正当な人事権の行使として可能です。

職場不倫を会社に暴露しても構わないか?

会社に懲戒して欲しい、配置転換などで接触しないようにして欲しいという理由で、会社に職場不倫を暴露することは許されるでしょうか?名誉毀損やプライバシー侵害にはならないのでしょうか?

いくら会社が職場不倫を懲戒することができるからといって、それは会社と従業員の問題です。あえて会社に暴露する行為に正当性はないと言えなくもありません。実際、職場不倫を暴露する人の動機は報復であることが多いと思います。

しかし、不倫の再発を防止するため、配置転換などで接触しないように配慮して欲しいと要望する場合であれば、正当性がないとは言い難いように思われます。実際、親や職場など、第三者へ暴露した事例であっても、その目的などに正当性があって、適切な範囲内への暴露であれば、違法性を否定している裁判例も存在します。

不貞相手に退職を求めることはできるか?

退職の強制はできないです。

しかし、双方が話合いで納得すれば、退職してもらうこともできるので、このような要望をされる方もいます。職場不倫を防止するためには、職場での接触を断つという考え方は、合理的と言えるでしょう。

ただし、不貞相手を退職させるということは、不貞相手が、自身の職場での立場を心配する必要がなくなるということでもあります。通常、仕事を継続している限り、勤務先に不倫を知られたくはないでしょうが、退職してしまえば知られても構わないので、暴露行為に及び、配偶者が窮地に立たされることもあり得ます。あることないことを同僚に吹聴してまわるということも考えられるでしょう。

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