親密であることを証明しても不貞が認められない場合がある
一般的に、不貞の証明は難しいとされています。性交渉は密室で行われるので、その瞬間を録音・録画するのは困難ですし、目撃者もいないのが通常だからです。
最近では、親密なやり取りをしているLINEが証拠になることがありますが、親密であるというだけで性交渉まで認定されるとは限りません。実際、訴訟で争われると、敗訴してしまう例も珍しくないのです。
女性の家に合鍵で出入りしても不貞が認められなかった事例
遅くとも平成28年4月頃には被告の自宅の合鍵を補助参加人(注:原告の夫)が預かるようになり、その後しばしば補助参加人が被告の自宅に出入りするなどといった関係にあったことが認められ、(中略)相当親密な関係にあったことは明らかといえる。
東京地方裁判所令和4年1月18日判決
もっとも、自宅は日常生活の場であり、専ら性行為を行うことを目的とした場所などではないのであるから、補助参加人が被告の自宅を訪れて一定時間滞在したことのみをもって直ちに同人らが性行為に及んだとの事実が推認されるものではない。
相手女性宅に出入りして合鍵を預かるような関係だったのに不貞の証明とは言えないという厳しい判決です。この判決からすれば、探偵が女性宅に出入りする瞬間を写真撮影しても、それだけでは不貞の証拠にはならないということが分かります。
ただし、この事件では、宿泊の事実が認定されていません。夫が女性宅に滞在した時間(原告の主張)は、次の通りです。
- 午前6時頃~午前10時頃まで
- 午後1時頃~午後7時頃まで
- 午前9時頃~午後3時頃まで
- 午後8時25分頃
- 午後5時頃~午後7時頃まで
- 午後6時頃~午後8時頃まで
- 午後4時頃~午後8時頃まで
しかし、宿泊の事実が認定されていれば、不貞が認められたとは限りません。合鍵を渡すというのは相当親しい関係であり、実際、裁判所も、親しい関係にあることは認めています。それにもかかわらず、不貞が認定されなかったのですから、宿泊があったとしても、同じ結果だった可能性もあります。
しかも、本件では、被告女性との関係について、「後悔も反省もしていないし、謝罪するつもりもない」、「お前より被告女性の方を支えていきたい」、「全面的に俺が悪かった」という夫の発言があったにも関わらず、被告との性交渉を認める趣旨のものとまでは言い難いと評価されています。
自宅は日常生活の場であり、専ら性行為を行うことを目的とした場所ではないという論理からすれば、自宅への出入りを証明するだけで十分かは、慎重に判断する必要があります。
ただし、本件については、同じ事実関係でも、裁判官が異なれば、不貞が認められた可能性もあると思われます。
実際の話
実際の事件では、相手と親密な関係にあるところまで証明できれば、慰謝料を支払わせることができることが多いです。弁護士が入り、訴訟になっても、嘘をつき続けられる人は稀なので、途中で慰謝料を支払う形で和解するからです。
裁判所も、性行為までは認定できないとしても、不貞関係にあるのだろうと推測される場合には、裁判の席上で、被告側に慰謝料を支払う形で和解するように促すことが多く、実際、そのような解決になっていることが多いと言えます。
性行為を完全に証明するのは至難の業なので、ある程度リスクがあることは込みで、慰謝料請求に進んだ方が良い場合もあるということですね。