不貞相手に貞操権侵害で慰謝料請求ができるか

「妻とは上手くいっていない」、「妻とは別れるから結婚しよう」と言われて、交際が始まった場合、それが嘘だったら、不貞相手に慰謝料を請求できるでしょうか。

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基本的には認められないが、違法性が著しく大きいと認められる

裁判所は、不貞は違法行為なので、基本的には、貞操権侵害などで慰謝料を請求することはできないと考えています。ただし、一方の違法性が著しく大きい場合には、慰謝料請求が認められる場合もあります。

そもそも本件交際は、不貞行為として違法との評価を受けるものであるところ、不貞関係にある一方当事者からの相手方に対する貞操権侵害等を理由とする慰謝料請求は、基本的には民法708条の法の精神に反して許されないと考えられる。したがって、本件交際についてYのAに対する不法行為が成立すると認められるのは、その開始、継続にあたってのAの言動の内容や悪質性の程度と、これらを受けたYの落ち度などの諸般の事情を比較し、Aの違法性が著しく大きいと評価できる場合に限られると解するのが相当である。

東京地裁平成31年1月11日

独身だと嘘をつかれた場合は、貞操権侵害で慰謝料請求できる可能性がある

独身だと嘘をつかれた場合、嘘を簡単に信じたことに落ち度があれば、不貞相手の配偶者に対しては、慰謝料を支払う必要がありますが、こちらも、不貞相手に対して、慰謝料を請求できる可能性が出てきます。

Aは、自らを独身であると嘘をついてYに交際を迫り、性交渉をもち、その後、既婚者であって子どももいることを告白するも、妻とは仲が悪く、8年前に離婚届も書いており、離婚して原告と結婚するなどという話をしており、Yは、Aが離婚し自分と結婚してくれるものと信じて交際を継続したことが認められる。・・・・・・Aの行為は、YにAが独身であると思わせ性交渉をもち、その後は妻とは離婚しYと結婚すると信じさせて交際を継続させたものであって、Yの貞操権(性的自由)を侵害するものであり、不法行為を構成するというべきである。

東京地裁平成30年1月19日

この裁判例では、途中から既婚者だと知って交際を継続していますが、それでも貞操権侵害が認められています。

最初から既婚者だと知っていた場合は?

最初から既婚者だと知っていた場合であっても、不貞相手の違法性が著しく大きい場合には、貞操権侵害で慰謝料請求をすることができるはずです。しかし、公表されている裁判例では、やはり独身だと嘘をついたパターン(離婚したという嘘を含む)が多く、原則保護しないという裁判所の考え方からすれば、最初から既婚者だと知って交際していた場合には、よほど悪質な要素がなければ、認められないと考えた方が良いでしょう。

また、不貞における貞操権侵害は、保護する必要性が小さくなると思いますので、慰謝料が認められたとしても、金額は低くなる傾向にあります。

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