不貞慰謝料請求を受け、どうしても自分で交渉したい方へ。自分で交渉する場合の心構えをお伝えします。
直接会わない
直接会うのはトラブルの元です。可能な限り、電話、メール、書面で交渉しましょう。
どうしても直接会う必要がある場合、次の点を意識してください。
公共の場を指定してください。
レストランやカフェ、ホテルのラウンジなど、周囲に人がいる公共の場を指定しましょう。
閉鎖された空間では、退席しづらいですし、感情的になって、暴力などに発展する可能性も考慮しましょう。
相手は一人で来るとは限りません。
事前の予告なく、親兄弟や探偵、知人、弁護士などが同席する可能性があります。
「一人で来る」と言っている場合でも、約束が守られるという保証はないと思ってください。
その場でサインしてはいけません。
相手が示談書などを作成して持参する可能性がありますが、絶対に、その場でサインしてはいけません。
サインしてしまったけど納得がいかないという相談をよく受けますが、基本的に、約束は有効だと考えてください。
「脅されて書いた」等の弁解は、そう簡単には認められません。
録音されていると思ってください。
基本的に、録音されていると思って交渉に臨んでください。
脅迫するようなことは絶対言ってはいけません。
自白を取られたり、反省していないような発言を録音されると、後の裁判で不利になる可能性があります。
また、口頭でも合意が成立しますので、示談書などにサインしなくても、何かを約束してしまったら取り消せないと考えましょう。
親兄弟や勤務先の情報を渡してはいけません。
親兄弟や勤務先の情報提供を求められ、渡してしまう人が珍しくありません。家族や勤務先に暴露されるなどの危険がありますので、絶対に渡さないようにしてください。
弁護士以外の代理人と交渉してはいけません。
弁護士以外の代理人と称する人物とは交渉しない方が無難です。相手方本人とキチンとコミュニケーションが取れているとは限りませんから、代理人の言うことが本当かどうか分かりません。また、弁護士法違反(非弁行為)の業者や、反社会的勢力(暴力団等)の可能性もあります。
示談書にサインするときの確認事項
金額は適正ですか?
不貞慰謝料の相場は、ほとんどの場合、300万円未満です。300万円以上が認められた裁判例もありますが、数は限られています。一度示談すると、後から減額することはできないので、きちんと納得のいく金額でサインしてください。
求償関係は大丈夫ですか?
①あなたが支払った後、不貞相手に求償することができるのか?それとも、求償権は放棄するのか?
②実は、不貞相手が先に支払っていて、あなたが求償を受けたりする可能性はないのか?
③不貞相手は、求償に応じる意思があるのか?
後から求償できると思っていても、実際は難しい場合もあります。勝手に想像するのではなく、きちんと求償関係について確認し、示談書に明記したり、不貞相手の意思を確認しておきましょう。
接触禁止条項(違約金条項)は大丈夫ですか?
不貞慰謝料事件の場合、接触禁止条項を付け、更に、「今後接触した場合〇〇万円払う」などの違約金条項を付ける場合があります。あなたが、不貞相手と関係を継続しようと考えている場合、違約条項に違反すると、更に違約金を支払わなければならなくなります。安易に約束しないように気をつけてください。
清算条項は付いていますか?
清算条項とは、「甲と乙とは、本示談書に定めるもののほか、なんらの債権債務もないことを相互に確認する。」という内容のものです。これにより、示談書に記載されたもの以外の支払義務がないことを確定し、二重に請求を受けることを防止できますので、示談する場合には必ず付けるようにしましょう。
示談書は一部手元に残していますか?
稀に、示談したけど、相手に示談書を渡してしまって、コピーすら手元に残っていないという方がいます。こうなると、どのような内容の示談をしたのかが分からなくなりますし、後日、弁護士などに相談しなければならなくなった場合などに不便です。必ず、2部作成し、1部は手元に残しておきましょう。
お金を払うときは、必ず送金記録を残しましょう
現金で支払って領収証を受け取っていないと、後から受け取っていないと言われるリスクがあります。いくら相手が誠実そうな人であっても、お金が絡むと豹変することはありますので、必ず、口座振替などで送金記録を残すようにしましょう。
また、送金したお金が慰謝料であるということが分かるようにしましょう。具体的には、「慰謝料として受領した」という領収証を発行してもらうのが一番ですが、示談書に「慰謝料以外に債権債務がない」という記載があれば、送金したものが慰謝料であるということが証明できます。
慰謝料を支払ったのに、「確かに受け取ったが、あれは慰謝料ではない。別のお金だ。慰謝料は別途請求する。」というトラブルにならないよう注意してください。
基本的には弁護士に依頼した方が良い
基本的には、最初から弁護士に依頼することをお勧めします。
自分で交渉した後に相談に来られる方も多いのですが、やはり、それまでの交渉の経過に引きずられてしまい、まとまりにくくなる傾向にありますし、口頭で約束した内容を録音されたりすると、再交渉が不可能になってしまう場合もあります。示談した後にトラブルになる例も多く、二重に請求を受けたり、示談書の内容が曖昧で、こちらが考えている通りに相手が受け取っていないというケースもよくあります。
弁護士は、普段から、あらゆるトラブルを見聞していますので、事前に察知する能力が高く、確実な解決を図ることができます。